メニュー

想定内でも焦る本人以外からの声

[2024.11.10]

昨日土曜日、最後の患者さんを診終えて「お疲れ~」とそばにいたナースに声をかけ、さてと‥と、いきなりプライベートのスマホが鳴る。表示は「金丸正俊」。ったく!手が空いたのを見計らうかのようなタイミング! 📞マークを押せば、こちらはわかっているのに必ず「おとうちゃまだけど‥」ではじまる父からの電話。今日は何を言い出すのかしら? と、なんか変?「金丸正俊さんのお嬢さんですか?」はっきりとした男性の声。「とうとう来たか‥」次を聞くのが怖い自分と想定内のことが起きてしまった‥という変な覚悟とが入り交じったような気持ち。「私が長女の千穂です」と、「私は○○と言います。今、お父様が横断歩道で転んでけがをなさって、救急車を待っているところです」はっきりとした声の主からの状況説明。私はあまりに容易に状況が想像できた。というのも、きっと、それは父は私の言いつけを守ったから起きたのだ。朝、出掛けに父に「今日は天気良さそうだからちゃんと散歩して。危ないから補聴器つけて!」何も用事がないと朝からぐうたら寝てしまい、なんとなく1日が終わってしまう父。そうでなくてもルーチンの予定がないと今日が何曜日かも最近は覚束ない。きっと、私との約束を守って出かけた先でのことに違いない。父に何かあれば、そそのかした私のせい。私が言わなければこんな目には会わなかったはず。どっと自責の念が押し寄せる。父の生死に関わることがおきていたらどうしよう‥。「まだ、仕事中ですよね?救急車も時間かかっているようですが、どなたか、搬送先に行かれますか?」相手は淡々と次にとるべき行動を説明‥。「私が散歩なんてうながしたばかりにこんなことになり‥他に意識とかは?」「意識清明。仕方ないですよ。天気も良いし。」見知らぬ相手の一人芝居の落ち込みに、あろうことか、慰めの一言。 一旦電話を切り、とりあえず今すぐ行動できる身内に連絡をつけた。 すぐに父の携帯へ連絡。「身内が搬送先の病院へ向かうので父を1人救急車へ乗せて大丈夫なんですが、○○さん、それまでいていだだけますか?」「大丈夫、一緒に待ちますから」「で、父の具合は大丈夫なんでしょうか?」さらに詳細を知りたい私に「GCSで‥」具体的な専門用語の嵐のなか、無事を確認し、ひと安心。側にいてくれたナースと胸を撫で下ろす。 「あの~医療関係の方ですか?」「‥消防です」「すみません。勤務時間外に父の世話までさせてしまい‥」しかし、なんと運の良い父。転んで救助者が、通りすがりの、その道の達人! あとでお礼をと、「調布のどこか、消防にご在席なんですか?」まさか、住所とまではいかなくても、そういう職種ならば、直接職場に感謝の辞を述べに参じても差し支えないはず。「いや、いいんです。お気になさらずに。」なかなか、謙遜して聞き出せぬ相手に「せめて職場にでも感謝のご挨拶にとおもって…」と、「大手町ですから!」「‥」ありゃ、本省?組織が大きすぎて○○さんだけじゃ、君の名は‥状態。「とにかく、救急車が来るまで待ちますから、あとは救急隊から搬送先など連絡あると思います」適切な対応にこちらは、たじたじ。父の声を聞きたいとい言えばかわってくださり、とりあえず軽傷であることを確認。本人に聞けば、回りに何人かとりまいて気遣って下さっている模様‥ こんな寒い夕暮れに、その消防庁の人のみならず心配して見守っている人が複数いるなんて! なんてこと! 今まで知らなかったけど、92歳という年の功?父は幸せを背負って歩いているのかしら?「とにかく、周りの皆様にも宜しく伝えてね」父に伝言。  その後、救急隊から。搬送先に身内が行くことを伝えたところ「次には、お父さん認知症ありますか?」おそらく、怪我で頭を打ったから、その確認?すぐにわかるよね‥。「ありますよ。打ち所が悪かったわけではありませんから。さっき話したら、いつもの調子でした…」救急隊も、とんちんかんは今回のエピソードとは関係ないと知り重症度はないと判断したのだろう‥ で、我がクリニックからも遠くはない、恵仁会へ運んでくれた。  CTでも頭には今のところは異常なくひと安心。 夜、残務中の私のもとに父を身内が連れて寄ってくれた。「ごめんね。私が散歩しろなんて言ったばっかりに」「そんなこと気にせんでいい。おとうちゃまも、信号がちかちかしていたから走ったら、足がもつれたんだよ」頬に大きな絆創膏が張られ、口元しか見えないけど、笑いの表情。耳にはちゃんと補聴器‥。私との約束守ったんだ‥。 やはり本人の顔見てやっと落ち着けた。  もう散歩するなともいえないし、私が一緒の時だけじゃ限られる。ヘルパーさん雇うといっても、いつも天気が良くて散歩できるわけでもない‥さあ、どうするか‥ 「青信号が変わるから走るなんて、気が若い証拠よ!」今日来たスタッフからの声。 確かにそうね‥ まだまだ、出来ることもたくさんあるし‥ あれはだめ、これもだめ、あぶないから! じゃなくて、ここまで長生きしたんだから、好きにして、出たとこ勝負か‥  となると‥ 今度は「おとうさん、迷子になりました」の知らせかしら?  またまた、まわりに心配をかけてはねぇ‥。   最後に。昨日、11月9日、夕方16時頃、調布の多摩川べりの横断歩道で糸杉みたいなおじいちゃんが転倒したのを介抱したり救急車が来るまで見守っていてくださった皆様、本当にありがとうございました。皆様の優しいお気持ち、感謝で一杯です。 寒いなか、じっと立っていて、どうか、かぜなどひいてませんように! 

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME