日本人の腸内細菌。コロナ感染での腸内細菌
3月半ば‥来週末は桜咲くのかしら? 自転車通勤の私は、たまたま通勤日が強風だった?のか、とにかく日々、風と戦っての通勤のイメージしか残ってない。私の印象もやぶさかではないようで、「花粉症疲れ」という単語(巷ででまわってるのかしら?)を来院の患者さんから聞くことが多い今日この頃。 というのも、(私はそこまでではないが)、鼻がつまって、夜不眠に陥っている患者さんも例年より多いみたい。抗アレルギー薬以外にあの手この手、相談しながら、とにかくこの時期のQOLをあげるべく、知恵を絞る、そんな昨今‥
さて、アレルギーの話題より今日は、定期的に聴講している腸内細菌Webセミナーから。多施設が共同で研究している中での解析結果からの報告なので、演者は変われど、出所は一緒みたい。 さて、最近世間の注目度も高い腸内細菌。メタゲノム解析やマイクロボーム解析という手法の発達で、便の採取でその人個人の腸内細菌の状態がわかるようになったと前回blogで解説したけど、もはや研究室レベルの、一般人からかけはなれた世界の話ではなく、最近ではテレビコマーシャルでもあるように、便を郵送すれば腸内細菌を調べてくれて、さらにはカスタマイズされた、腸活グラノーラまで手に入る‥いまはそんな時代。 こうして腸内細菌も身近になってきたなかで、今日のはなしは「日本人の腸内細菌の特徴「新型コロナウイルス感染と腸内細菌」。12月のblogにも書いたので、その続きのような内容になります。これが中々おもしろかったので紹介。
まず、日本人の腸内細菌の特徴として、(細かくは5種に分けられるようだけど)炭水化物やアミノ酸、ビタミンの代謝機能が高い細菌が多いとのこと。 炭水化物が腸内細菌によって炭酸ガス、水素、短鎖脂肪酸と分解されるけど、このうち、日本人は腸内細菌しか作り出すことのできない短脂肪酸産生菌が多い。 「短鎖脂肪酸」最近よく耳にするのは、良いことずくめの物質だから。腸管内で排便を促したりよい働きをするだけではなく、肥満の予防やコレステロール合成抑制にはたらくことや、人の免疫の恒常性を保ったり、腸管内で細菌侵入を防など。日本人が肥満者が少なく長寿が多いことからも、短鎖脂肪酸が注目れている
こうした人種や個々人の糞便の解析から「腸内細菌やその代謝物質が全身のバランスを整えている」ということがわかってきた。
そのことを踏まえたうえで次の話題。人類を苦しめぬいたコロナ感染症。「サイトカインストーム」のような、たかが外れた生体の恒常性の崩壊に、恒常性を保つ腸内細菌に不具合が起きているのではないか? という仮説をたてて112人のコロナ感染者の糞便検討を行ったそうだ。対照の112人はひとりひとり、既往歴、年齢、性別など背景因子を全て一致させた人々。それらの腸内細菌、その代謝物質、サイトカインの変化を検討したとのこと。 こうしてわかったことは、短鎖脂肪酸のひとつ、酪酸産生菌群が減少していたり、代謝物質においては短鎖脂肪酸や神経伝達物質やビタミンB6が減っていた。同時にこれら代謝物質の産生にかかわる腸内細菌の遺伝子も変化していたとのこと。 コロナで減少した短鎖脂肪酸産生菌や代謝物質と炎症を引き起こすサイトカインは負の関係、恒常性を保つサイトカインは正の関係を示していたとのこと。
つまり、腸内細菌や短鎖脂肪酸をはじめとする身体に必要な細菌の産生物質がコロナ感染での過剰な免疫応答に関与していることがわかったとのことだ。
まだまだ研究はしのぎを削るがごとく進んでいるようで、コロナ感染だけでなく、腸内細菌やその代謝物質、サイトカインの検討が癌や自己免疫疾患の解析にも一役を担うようだ。面白いことにコロナでの腸内細菌の変化と関節リウマチ患者の変化が似ていたことも興味深い。
たまたま興味深く聴講したセミナーを紹介しました。 さて、今日のまとめ。最近しみじみ感じていること… 「身体にいいこと、良いもの」 というフレーズが巷にやたらあふれてる印象… 私が研修医だった30年前にはそういうフレーズはなかったはず… 長寿社会になり、人々の寿命いっぱい心身元気を全うしようとする意識の表れか? そんな社会での意識の高まりの最前線に「腸内細菌研究」は位置づけられているのだろう…。