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こんな時世だから考えたい「確証バイアス」

[2022.09.18]

台風直撃の三連休。クリニックもキャンセルだらけで閑古鳥かと思いきや、足元濡らしてでも時間に来院してくださる検診受診の方や予約の患者さん…。すっかりコロナ問い合わせも落ち着き、今日も含めて今は「検診祭」といった感じ。府中市全体の検診者数から見れば、うちなんかは何百分の一程度の数しかいないけれど、それでも連日「駆け込み予約」が多い。ここ2年はコロナ渦で府中市検診は7月から12月だったのが、今回は旧来通り、9月いっぱいの3か月。「延長されるに違いない…」って呑気に構えていたから慌てて申し込んだ…何て言いながらやってくる方も多い。

そんな9月半ばの今日のblog更新。検診がらみ、コレステロールの話しをネタにしようかとも考えたけど、それは来週。今日は最近私の頭の中でくるくる回ってる単語「確証バイアス」を話題に。日記のblogにはその時どき、自分が気にしていた単語をかきとめておくのも必要だから…。そして言いたいこともblog最後に書き留めたいから。

私はいつもジョギングしながらラジオを聴いている。数日前、そんなふうに走っていたら、たまたま聴いていた番組の「大人のお悩み相談」みたいなコーナーにとあるリスナーが「大切な近親者が、どうも最近、霊感商法みたいなものにはまっているみたい。どうすれば目を覚ましてくれるのだろう…」 (いま世間で話題となっている宗教団体かは不明だが)時世を反映したような、シビアなお悩みが寄せられた。 リスナーどうし、何件か回答もラジオに寄せられていたが、番組ではプロの心理学者にも回答を委ねていた。で、その回答に「確証バイアス」というフレーズが出てきたのだ。中身はこうだ。「確証バイアスとは、人間誰でも陥いる思考過程のエラー=認知バイアスっていうくくりのひとつ。自分が思ったり、考えたことを後ろ盾してくれるような肯定情報しか集めなくなってしまうこと。つまり、この近親者の方に本人のためと思って身近な人たちが何かを言っても、自分に否定的な情報には耳をかさなくなっているから、第三者に委ねるのが良い」といった回答だったと思う。  この一件が何故そんなにひっかかったのかというと、医学、私たちの日常の診断学でも、ここ数年話題になる単語で、時には試験にも登場するくらい。 手持ちの知識や技術をいかしつつ、正しい考えや判断で誤診を起こさないようつとめなければならないのだが、様々な外的、内的要因で考えに「歪み=バイアス」が働いてしまう。医療現場で起こりがちなバイアスのひとつに、この「確証バイアス」もある。「この病名」と初めに疑ったら、それをサポートするデータしか取り入れず、合致しない所見はOmitしてしまう行為。早く治療して、よくしてあげたい気持ちからでも、これじゃ最終的には患者さんのためにはならない…他にも診断学には、available bias=よくある疾患に飛びついてしまう、overconfidence bias=専門医や前医の診断を信じ込んで疑わない、hassle bias=疲れているときなど、楽に処理できる疾患や仮説に求めてしまう…こういった診断中に陥りがちなバイアスを回避していかなければならず、話題にされている。  「確証バイアスって耳なじみのフレーズだけど、そっかぁ、霊感商法におちいるときの認知バイアスでもあるんだ…」ってことが何となく走りながら引っかかった。  で、もすこし、気になり調べてみれば、(考えてみれば当たり前だけど)人間はそもそも「自分は正しいと思いたい」「正しいと考えたことを変えたくない」 という心理思考があるからおこる思考のエラー。血液型占いの例が調べたら出ていたけど 「オモイコミが激しい」「愛は盲目…」なんて昔から転がる単語も「確証バイアス」のひとつなのかもね…。恋愛当初なんて、相手の良いとこしか見えないもの…。嫌なとこ、見なかったことにしちゃうなんて、まさに確証バイアスだわ…。自分が好きになった人が素敵な人だって言う考えを信じたいがめの乙女心も確証バイアスのひとつ?   私たち医学の世界以外でも「確証バイアス」が問題視されていた場面として挙がっていたのは「面接」「人事評価」での評価基準の不公平さ。確かに…。あと、この、コロナ渦でもまさに思い当たる場面が。「ワクチン接種で何かが(なんだか忘れた)注入される」「ニンニクでコロナが予防できる」 今はインターネット等で検索の仕方によっては、この「確証バイアス」をサポートしかねないような情報収集しかできない仕組みにも陥りがちだから考えもの。

たまたま、ラジオから耳にはいってきた、この確証バイアス…今の時世こそ、人間誰でも陥りやすい思考と認識して、たえず、客観的に「ほんとにこれでいいのかな…」立ち止まり考えるゆとりをもたないと。あと、相談できる内容なら、たえず、周りの意見も聞く…。これは自戒もこめて私にもあてはまる。「思い込みじゃないのかな?」 そう思ってクリニックのスタッフに話してみて、「あっそうか…」ってこと、今まで何度もあったっけ…   政治家にも言いたい。「確証バイアス」に支配されて道をあやまらないでほしい。確証バイアス解決策にもある、「聴く耳…」はどこに行っちゃったんだろう?? 「説得」やちっとも理解しがたい「国民の皆様への説明」じゃ話しにならない…

秋の落ちてきそうな雲。走りながら追っかける

まっすぐな道。雲と走る。嫌なことも忘れちゃえ

 

 

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