デリケートなお腹
世間ではインフルエンザの流行の兆しと言われているけどクリニックではそういわれだしたこの1週間は
まだ出ていない。「インフルエンザ?」と思い検査しても皆陰性。
そんな中、ここ数週間のちょっとした傾向について今日は気がついたことを。土地柄うちは「ご年配方が多いクリニック」
と思っていたが、いやいや、最近患者さんの年齢層、若がえり傾向で「受験生が多いな」という印象。
数ヶ月前からの下痢や便秘、それが最近症状がひどくなる、気になる…とのことでひとりでふらりとやってきたり、お母様と一緒で。症状がでたりでなかったり。季節柄、「感染性?」本人も思って来る人もあるけど、それでも話を聞いてみると症状は結構経過が長い。問診票の年齢からよくよく聞いてみると「あら受験生…」てなパターン。高校受験、大学受験、さまざま。男女比も同じくらいの割合。 もし私に子供がいたら、きっと彼らと同じくらいの年齢かな?
そう思うとなんか、他人事じゃないような気がして。
最終的にはちゃんと検査をして腸に器質的なものがないことを確認して、最後に『過敏性腸症候群』となるわけだけど、今彼らにそこまでのことをする時間も心の準備もないから、問診と診察で感染や急を要する腸疾患でなければ、試験が目前に迫るなか、過敏性腸症候群として、それぞれ症状に合わせて漢方やら西洋薬を駆使。
大人だって出勤前にしぶりばら。駅ついてトイレに駆け込む、ひどくなると『急行には乗れません~』なんて患者さんっもいる、死ぬ訳じゃないけどライフクォリティを確実に下げる厄介な腸疾患…市販の『⚪⚪ピタン』じゃ効かなくて…
『脳腸循環』ちゃんと胃腸は消化吸収するだけではなくとてもデリケートな臓器。メンタルがお腹に来る。起きていることは当たり前なこと。自分だけじゃないんだよ。
わたしがこの疾患で身近で思い付くのは紛れもない、御歳86の我が父の現役時代。私が幼い頃電車の中で、突然『おしっこいきたい』というと母はいつも『おうちまでかまん』と一蹴。そんななか、父とお出かけの時は、どんな緊急事態の時も必ず次の駅で降りて、それも迷いもなく駅トイレへ猛突進でつれていってくれた。母との違いに『おとうちゃまは天才』って思ってた幼い頃の思い出。今になり同居する父にその話を聞かせると、当時の父の年齢を越える私には『ゼネコンの営業ノルマは桁が違うし、毎日どうしようかと。僕もあんたたち子供二人食わせなきゃいけないし、朝いつも電車の中でも腹がスッキリしなくて悩まされたんだよ』と。今じゃすっかり解放され、むしろ高齢者にありがちな便秘がメイン?
体張って戦う営業マンも受験生も悩ます過敏性腸症候群…まだまだ若くて必死に目標に取り組んでいる間だけでも暴れないで静かにしていてくれますように!
彼らのお腹にそう願いながら診察し、薬処方する最近の診察室の風景。