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ヒヤリ!高齢者の血圧

[2021.01.24]

雪降らなくてよかった!一番の寒さは覚悟だけど、日曜の通勤から雪となるとさすがにしんどいもの…。ここのところのクリニックは「台風の目」?? 世間は街のクリニックレベルでも医療崩壊が叫ばれ、多忙の嵐がふいているけど。確かに発熱患者さんの問い合わせはあるにせよ、報道のほどではないし、出控えモードか、はたまた検診や予防接種が終わったせいか、わがクリニックは静かな空気が流れている。

さて、今回は「高齢者の血圧」についてのコメントです。。プライベートでの「ほんとにあった怖い話」もおりまぜて。 1週間前の日曜日、自宅のリビングでブログを更新中の出来事。ちょうど今日みたいに。あっちのダイニングではテレビ見ながら御父が晩酌中。夕食後のいつもの風景。更新が遅れていたので夢中で私は下を向きタブレットいじっている。と、いきなり「カシャン」とあちらで音がした。「あーまた!」御父時々、飲みながらうたた寝して、持っていたコップを落とし、床びちょびちょにしてしまう。日本酒だとべとべとになるからほんとにいや!そう思いながらも下向きパチパチ。と、「あーっ」と向こうで叫び声。「えっ?」状況飲み込めず、顔を上げると、御父が椅子に座ったままのけ反っている。うたた寝で船こいでいるんだったら、こっちに頭戻るはずだよね?おかしい!! 動かない!固まってる。「おとうちゃま、おとうちゃま!」呼びながら駆け寄っても微動だにせず。そのまま肩揺すったり呼びかけても、身体は硬くうごかない。目は閉じたまま。顔に息の漏れる気配もない…呼びかけ、必死で刺激与えながらも、ただ事ならぬ状況に「もう最期?こんなに呆気なく?さよならになっちゃうの?さっきご飯美味しかったって言ってたばかりじゃない」  一瞬にしてざわついた感情が脳裏を掠める。とにかく救急車呼ぼうとスマホ探すも、こういうときに限って、あれ?見当たらない。テーブルにある父のガラケーを借り、慌ててコールするも繋がらない!なんで?!コロナ対応で忙しい?何度もトライしても。「おとうちゃま!おとうちゃま」呼びながら肩揺すり、「ダメだ…反応無し」…そうこうしているあいだにも、今度は父のガラケーにさっきからうるさく電話がなる。「こんなタイミングに誰?」その間、数分だっただろうか…椅子から下ろして心マ?…そう考え動かそうとした瞬間、フーッとゆっくり目があきだした。「あっ、おとうちゃま!大丈夫?」「名前言ってみて」「ここはどこ」「手足バタバタさせてみて」  一つ一つの反応見てとりあえずほっ…大丈夫だ。頭じゃなかったみたい…。うっすら顔には汗ばんでいる。とりあえず血圧はかると106/60しかない…ようやく、さっきからけたたましくなる父のガラケに出る余裕も。「こちら警察署です。どうかしましたか」「…すいません!救急車呼ぶつもりで110してたみたい。すいません…」「落ち着いて下さい。落ち着いて。それから119をかけてください」…あらら…慌てて110してたみたい。どうりで。繋がらないわけね…家族となると、常軌を逸してしまうようだ… やれやれ。 救急要請は必要ないと判断し、一晩様子見て、翌日MRでは瘤も狭窄もなかった。

ここからが自戒も含めての「老人の下の血圧」の話。前回、あえて「高齢者は低くなる」とかいたけど、年齢と共に上は高く、下は低くなりやすい。動脈硬化が細い血管のみならず太い血管にも及んで来くるから上の血圧も高くなりがち。v=IRのRが大きくなることが太い血管でもおきて来るから。次に下の血圧に当たる拡張期には、末梢に血液が送られるフェーズだけど、極端なはなし、硬化がすすむと流れも悪くなるうえ末梢も硬くなるからRもIも小さくなり、V、つまり下の血圧は低くなりやすい…

おそらく…察するに、父の身体に起きていたのはまさにこの変化だったのではないだろうか…このところ持病の高血圧のコントロールが悪く、実は朝に薬が増えていた。弁膜症もないのに上と下の差が結構ある。つまり動脈硬化が強いと言うこと。この日はアルコールも飲んでいたから、血管拡張、及び脱水も加わり、一過性に脳が虚血におちいったのではないだろうか…高齢者で腎臓の血管も硬化がすすんで機能が低下していれば薬もききやすい…MRでも一部、慢性の虚血性変化ありとコメントがあったから、この手の高齢者は教科書通りにの厳格な血圧管理はかえって危険かも。

一概には言えないが、父の出来事と、お風呂で暖まってて亡くなる高齢者も、おなじ機序。暖まって血管拡張して一過性に脳が虚血におちいり、フーッと意識が遠退いて溺死。 わがクリニックにも一人暮らしで血圧の薬取りに来る高齢者、何人かいる。彼らの上のみならず、下の血圧もしっかり見てないと…そして、特に一人暮らしの高齢者に薬出すときは、効果の出やすいことも肝に銘じないと。様々なことを学んだ。冬は寒いから水分も取りにくくて、夏のみならず、脱水にも気をつけさせないと。

あんなことがあって以来、話したり、食べて美味しいと反応し、私のばか話にけたけたわらう…そんな当たり前の御父の行動の一つ一つにほっとしながら、仕事終えての帰宅後の数時間を過ごした。つけっぱなし、出しっぱなし…文句を言う気もしない。そんな一週間だった。でも…私もいざという時の覚悟は決めておかなければいけないのかも。いつまでも元気に生きていてくれているわけではない。無条件で応援してくれるサポータも不死身ではない。妹にも言われた。「88なら、何かあっても、もう老衰…って片付けられる域に達しているよ。今回は正俊(父)があっちの世界に行こうとしたら摂子(母)があんたはまだダメってこっちの世界に押し戻したのかもよ…」確かに…押し戻してくれてよかったよ~でも私ももっとしっかりしなきゃ!119番 119番…遠い未来に使う番号であることを祈る。

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