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年配の気持ち

[2020.10.18]

週末ごとに雨降り。急にさむくなるし。気象の変化について行けずに何となくだるいとか、体調崩されている方、1日の外来には何人かいらっしゃってます。

さて、今日は先週からの「反省」つながりで、最近私が猛省したこと。

数週間前に、米寿のお祝いと共に世田谷区から「日常生活についての自己チェック」と称する25項目からなるチェックリストの紙が同封されていた。毎日、朝の公園までの散歩で8000歩稼ぐから、運動機能は問題なし、栄養状態、口腔内状態、及び認知症についても薬飲んでいるくらいだから、この辺も想定内。

問題はその先、「うつ」の項目。

1 (ここ二週間)毎日の生活に充実感がない

2 (ここ二週間)これまで楽しんでやれていたことが楽しめなくなった

3 (ここ二週間)以前は楽にできていたことが今は億劫に感じられる

4 (ここ二週間)自分が役にたつ人間とは思えない

5 (ここ二週間)わけもなく疲れたようなかんじがする

2点以上でうつの心配となる。

点数の高さにビックリ!「えっ?」超想定外。「あれ、うつの傾向ありだって、おとうちゃま!」眼前の本人は顔色を変えずに「おとうちゃまは驚かんよ、きっとそうでると思っとったわ!」「自分が役に立つ人間じゃないなんて思わないでよ!ちゃんといつも疲れて不機嫌な私のサンドバッグになってるよ!」状況を認めたくない焦りからか、私は普段、侘びを入れずにやってることに、今更ながら感謝を述べて無理矢理点数下げようと試みるも…「コロナでカンツォーネとかもなくなっちゃったし、昼間とか一人でうちにおると、おかあちゃまにもっと優しくしてあげたらよかったとか考えちゃうんだ。あんたにも、よく言われてるでしょ、感謝の言葉が足りんって…」その言葉にドキッ、「気にしてたんだ…」昭和一けた九州男子、当たり前かも知れないけど「やってもらって当たり前」みたいなことがあると、常々私は「だから、おかあちゃまもよく言ってたよ。『おとうちゃまは、どんなに一生懸命やっても何にも言ってくれない…正俊冷たいの…』」と、私は冗談ごかしに生前の母の愚痴を父に言っている。「それにさ、今の若者みたいに『愛してるよ~ありがと』なんて言われりゃ、おかあちゃまももっと嬉しかったとおもうよ!」なんて、つい、考えもなく私は口にしていたのだ。そんな折、ただ父はにやにや「そんなこと、よう言えんし。わかってると思ってた…」「思ってるだけじゃ伝わらないの!ちゃんといわなきゃ!」何度私は父に説教めいたことを言っただろう…笑ってるから、堪えてないと思っていたけど、父は気にしていたんだ…私の心ない言葉のせいで…過去の人がこう言ってたなんて聞いても、真偽を確かめることもできないし、謝ることもできない相手がこう言ってたなんて、それを持ち出す私は卑怯きわまりなし。かわいそうなことしちゃった…猛省…最近父は気難しかった昔と違って、声を立ててわらったり、声を荒げることもないから、先に他界した母のことも乗り越えてくれていたのかと思っていた…悲しみの波の高さや波長は人それぞれ。しかもコロナのせいにはしたくないけど、こういった非日常の生活の中で、特に父を含めた年配の方は、若者とは違って後ろを振り返る事が多いみたい。家にじっとしている機会が多いと、つい、思い出さないようにしてた傷口にあえて、触れたりしてしまうのかな?

わがクリニックに来ている年配の患者さんも、人によっては父と同じようなこと口にしている方が少なからずいらっしゃる。

少しずつコロナ渦で社会の活動が手探り状態ながらも前に動いている中、取り残されるかのように波についていけない年配の方、感染を恐れるのは大事だけど厭世的なまでに頑なに閉じこもってしまっている人たち、心まで閉ざしてしまい、ますます周りとギャップが生じてしまう事が気がかり。

かの、御爺に対しても、心ない言葉は発しないよう心掛けると共に、私も当直ほどほどになるべく夜も一人にしないようにしなきゃ。

私は身近な人の心模様わからないくらいなんだから、他の人のうわべでないほんとの気持ちはさらにわからない…箱としてのクリニックのあり方、時代にキャッチアップすべく日々頭を悩ますなか、多忙を理由に言葉の剣を振りかざさないようにしないと。

さて、最後に…

最近、中止になっていたカンツォーネの教室が再開になった。レッスン用のデモCDもうちでは張り合いがないからか、最近聞きもしなかった父が再開の知らせに久しぶりに出かけてきた。私が帰宅して出迎えた父の表情、明るくなっていた。何だか生き生きしている。「行ってよかったよ。声を出すとこんなに元気になるとは今まで思ったこともなかったよ!足も軽くなって…」父にとっては80過ぎて始めてはじめた、音楽の世界…音符をおたまじゃくしというくらいだから、実力のほどはご愛敬だが、音楽が父の活力になっている。声を出すってよいことですね!

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