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胃酸抑えても消えない不快感

[2023.02.19]

桜の開花予報も話題になる今日この頃。「毎年こんなだっけ?こんなに寒暖差があると体がついて行けないよ~」 外来の挨拶はこんな感じで始まる今日この頃。 インフルやコロナに花粉症、胃腸炎… 最近の外来はあれもこれもで何が流行ってるということもなく、まんべんなく。この状況…そして患者さんとの話題も、旅行にランチにゴルフ…。クリニック全体の雰囲気も3年前のコロナ前に戻ってきた感じ。長かったな…。まだ終わっちゃいないけど、一人じゃクリニック切り盛りできなかった…過去も今もスタッフがいたから乗り切れた。

さて、今日も先週に引き続き「胃酸」絡みの話題。強力な制酸剤は上腹部不快感の消化器疾患には劇的な効果を奏するけど、この薬ではうまくいかないことも結構多い。いわゆる「胃食道逆流症」は内視鏡所見がある(症状の有無は問わない)場合と、内視鏡所見はないのに症状のみ呈する場合とがあり、後者が2倍くらい多い。所見があれば、制酸剤で出現している症状は消失。問題は所見がなくて、逆流症状のみ呈する場合。逆流症状のみの方の場合、強力な制酸剤を処方しても半分くらいの患者さんしか効果は得られない。制酸剤が効果ないのは、胃酸以外が胸やけ症状の原因と考えられている。食道の感受性が過敏になっていること、蠕動に問題があることなどが原因と考えられている。若い、痩せ型の女性に多いとも言われている。 実際にこういった患者さんを集めて、施設の整った大病院で調べてみると、例えば内視鏡下でのバルーン進展刺激。知覚過敏を有する人の場合、より小さなバルーン径で症状が出現したり、または酸を注入すると(生理的食塩水ですら)強い症状が起こるとのこと。また、唾液の分泌が過度の酸を抑えるとのことで、実際に調べてみると、知覚過敏を疑われる人は健常な人に比し、唾液が少なかったとか。因みに現在「上腹部不快感」や「胸やけ」の機能を調べる検査のゴールドスタンダードは「食道インピーダンス・ph検査」。食道内のphのモニターだけでなく、空気と液体の電気抵抗の違いを24時間モニタリングすることで、個人の食道内の動きや、空気と液体がどのタイミングで食道のどの辺を行き来しているかがわかり、結果、液体逆流に伴う症状か、機能性の胸やけかしっかりとした鑑別ができる。   こういった検査は限られた施設でしかできないから、この検査までとなると最終的な紹介先となる。    じゃ、クリニックレベルでどうとりくんでいくか…。 私見も加えつつまとめてみたい。まず、最近の内視鏡検査歴がなければ、やむを得ず投薬は先になるだろうけど、内視鏡検査が改善しないうちに、早めに施行したい。食道炎所見が得られれば所見と症状が一致しているということで、治療反応性がよい部類とわかる。問題は所見がないパターン。専門病院でしかできない検査の前に、例えば検査時に、食道と胃のつなぎ目当たりで空気を多めに入れたり、生理的食塩水や食物酢を注入して動きを観察することは、クリニックレベルでも診断の一助となる観察方法ではないだろうか。今までも、検査時に視野不良で水洗や空気を挿入すると、突然強い収縮波がでる患者さん、経験している。その時はたまたまと思って、特に意味を見出だそうとしなかったが、検査中食道炎所見のない有症状者へは再現性を確認してもよいのかもしれない。 次に投薬。有症状有所見者は。制酸剤治療。無所見有症状の患者さんも含め、制酸剤を効果的な服用をしていない可能性があるから、その効果をたしかめ、何よりききもしないのにいたずらな制酸剤投与の継続にならないように服薬指導は徹底的に。本当に制酸剤が効を発するかどうか、2週間くらいは様子を見たい。服薬しはじめてから、効果がでるのに早くて2,3日。即日改善はしない。1日1回のPPIは服薬して1時間くらいすると血中濃度が最高になること、また食後1時間くらいすると酸逆流も起こるから服薬のタイミングは食前のほうがよいということになる。さらに、この薬、胃酸で活性化される。胃酸がたくさんでる=最も食事量が多い時の食前が服薬のタイミングとなる。となるとヨーロッパの人と違い、日本人は夕食がメインの人が多いし、夜間に身体を横にしているときに症状も起こり易いから、夕食前がよいのかもしれない。また、効果を認めて症状が消失した場合、休薬もあり。 きちんと服薬指導して2週間くらい投薬しても改善ないばあいは、「逆流過敏」「運動異常」の可能性を考え、私は「お守りがわり」的なppi投薬はしない主義。(ここでやっと前回から今回へblogが繋がった!) 実際はこの手の患者さんのほうが多くて、他の消化器内科ドクター感じていると思うが、患者さんはほぼドクターショッピング。 既に前医で思い当たる投薬はなされていることがほとんど。 私が今回参考にした文献の筆者も同様の感想…。 患者さんも困ってるからこそ、助けを求めてあちこち行かれているわけだから何とかしてあげたい。漢方を含めて、或はストレスも原因にあることも多いのでオーダーメイドの治療となる。 ただ、今回も述べたような本格的な検査が必要なこともあるから、状況によっては施設を紹介も視野に入れないと。   今日はダラダラ感の否めないblogとなってしまったけど、多いのです、この症状の患者さん… 私が研修医の頃と違うなあって明らかに感じてます。

 

 

 

 

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