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虚血性大腸炎のこと

[2023.01.08]

新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。  新年明けてから寒い日が続きますが三が日も含め、ずっと快晴。穏やかな正月でしたが、世相もこんなふうな1年となってほしいものですね…。 明けて4日からの診療…。相変わらず発熱問い合わせは多かったけれど、コロナにまじってインフルエンザも昨年末よりは増えてた印象。家族の誰かが陽性となり、そのうちに家族内感染。統計取っているわけではないけれど、やはりインフルエンザ予防接種をしていない人の感染が多い印象です。

今日は新年初のblog更新なので、年末年始の診療で印象にのこった疾患のひとつを紹介します。「虚血性大腸炎」。経験なさった方は「ああ、あれね…」とすぐに光景がよみがえるとおもいます。突然の腹痛、下痢ではじまり、そのうちに下血を呈してくる。便意を催してトイレ行く度に下血するから、皆さんびっくりして来院されることが多い。「虚血性大腸炎」について少し解説します。「虚血性」とは大腸粘膜への血流が一過性に悪くなり、その血管に栄要されている腸粘膜に炎症がおきる疾患。原因は腸自体と血管との様子が絡み合っておきるので「これ!」と特定はできません。腸管側としては便秘がちで腸管内圧が亢進しやすい、食事後に腸管運動が消化吸収するため運動が亢進して虚血に陥る等。血管側の原因としては、動脈硬化による微小血管への血流不足(動脈硬化になるような高血圧や高脂質血症、糖尿病)、不整脈や脱水。こういった諸原因が絡み合っておきます。従って多くは60歳以降の比較的高齢の、(便秘も要因にあるためか)女性に多いです。勿論若年者でも起きることはあります。 ほとんどが一過性ですが、血流が再開せず腸粘膜への炎症波及が長期に及べば粘膜壊死となり、手術が必要になることもあります。血流の解剖学的な構造から、教科書的には血流不足しやすい左側結腸に起きやすいと言われていますが、実際私が経験した症例はあながちそうでもないよう。むしろ「急な腹痛、下痢、しばらくすると便に血液が混じってきて何度も行くようになった」という典型的な症状で診断の見当がつくことが多いです。治療は、一過性のことが多いのでまず「腸管安静」。腸に負担をかけないよう、絶食で水分摂取、(必要あれば)点滴で2,3日経過をみます。腸管安静を試みているうちに下血がおさまって来れば、その後徐々に消化のよい、低残渣食から開始していくようにアドバイスします。が、その間に腹痛や症状悪化の兆しがあれば、先の「壊死型」緊急手術になる可能性もあるのでその際はER受診するようつたえておきます。一過性型の虚血性大腸炎ならば、こうして外来通院で可能。臨床症状からは、虚血性だけではなく、キャンピロバクターをはじめとした細菌性腸炎、薬剤性腸炎、ごく稀に潰瘍性大腸炎やクローンの電撃発症例等のこともあるから、来院時には詳しい問診や採血でまず、当たりをつけなければなりませんが。 

ざっと、虚血性大腸炎とはこんな病気です。今回受診された方は症状のみならず、年齢や基礎疾患状況から「虚血性大腸炎」 を疑いながらも、年末年始に旅行歴があったため、細菌性も否定できず、採血データも参考に、今は虚血性として経過を見ています。 で、何が印象に残ったかとういうと… 私が病気の説明をしても、なんとなく腑に落ちない顔をしているのです。何かひっかかることがあるのかと聞いたところ「虚血性っていうのになんで血液が出てくるの?血が出るってことは血液が沢山あるんじゃないの?」 うーん。私も今まで何人もこの疾患の患者さんを診て来たけれど、この質問は初めて。いつも当たり前に疾患の説明していたから、この質問に、一瞬出鼻を挫かれたような、でも良く考えれば当然、この質問がでてもおかしくない。鋭い! で、私はちょっと考えこう説明しました。「虚血性っていうのは症状の原因が、大腸粘膜のの虚血状態ということなので、原因への名称。で、血液が出てくるのは、血流が途絶えた粘膜が、傷を受けたことになって、指怪我したときも血液が出てくるのと同じような機序で血液が出て来てしまうわけ。」 原因に対してついた病名が、体の中で起きている現象と乖離して捕らえられなくもない病名だから、患者さんも混乱してしまったのかもしれません。  日常、当たり前のように説明している中でも、時に「おやっ」というような質問を受け… 瞬時に答えてあげられればよいけれど。臨床は面白いですね。  

今年も4日から、コロナや発熱、慌ただしい新年スタートの幕開けでしたが、自分のできることをひとつひとつつみあげつつ、胃カメラや大腸検査も行っているので事故なく、できれば、いらした患者さんが少しでも満足してもらえるようにやっていければと思っています。スタッフ一同思いは同じですのでよろしくお願いします。

 

 

 

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