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子バカ 後輩バカ

[2023.12.24]

あと一週間で一年も終る。冬至であっという間の日没と長い夜、凍てつく寒さ。自転車を夜漕げば「ああ、やっぱり冬なのね‥」と12月も終わりに近いことを実感する。

一年を総括しての今年最後のブログとなる来週は何を書くか決めているのに、ラスト前の今日のお題が決まらない‥ こういう時は日記がわりに日常で起きた出来事を題材に。 いざ! 題して「子バカ 後輩バカ」

言わずと知れた、blog時々登場人物、我が御父。来年92になる。前回登場したのは2、3ヶ月前だったかしら?6月の誤嚥性肺炎入院以降、顕著な体調不良はないものの、相変わらず自分の唾液ですらむせて咳込むし、何とか身の回りのことはできはするけど、軽度認知症‥「~っぱなし」は当たり前。懸案の補聴器も確信犯でしていないことあり、見つかれば、都度私とバトル‥ 周囲の音にも関心持って、認知症進行食い止めたいのに。憎くてバトってるわけじゃないのに、子の心親知らず…。そんなに父に頼みごとを先日試みた。 近所のスーパーで去る12月16日に、そのスーパーのポイントとの引き換えのみを条件で「響、山崎、白州」のいずれか一本を分けてくれると言う企画があった。そこで買い物する度、チラシが目に入り気にはなり何度も目にする度思いは募る。私はカードポイント溜め込むタイプ。ポイントを使い貯めないタイプの人には成立しない話だから、ウイスキー好きの顧客でも競争率は若干下がるはず…。貯めたポイント失効切れで無駄にしちゃう失態を繰り返す私には、たまにはよいことあるもんだ…という心持ち。「手に入りにくくなったウイスキーの銘柄‥いいなあ。でも、16日は仕事だし‥」一応聞いてみれば、案の定、ネットとかじゃなく、当日、開店時間に並んで先着順とか。当日何本ずつ予定されているかもわからないとのこと。どれだけ並ぶのかも蓋をあけてみたいと‥昨年もあっという間だったけど、今年は昨年以上の問い合わせとのお店情報。並んで先着順。(土)はしっかり仕事。あきらめか‥待てよ‥時間だけはたっぷりある人が身近に1名。我が御父‥ 16日は季節外れの暖かさと、週の半ばくらいから、各局天気予報官が口を揃えて予報している。 しかも、最近ボケが進んだかな?と疑いたくなる行動も目につく父‥どんなものか、確認したい気持ちも芽生えた。「子供のお使い ならぬじいさんのお買い物」。 父の、最近サボりがちの朝の散歩。まずルートを変えて私の書いた地図を頼りに現地に向かい、予め私がお店の人に聞いた、当日列ができるであろう、スーパーの中央出入り口の前に開店のちょっと前から並び、時間になったら誘導にしたがい、もし叶うなら私から預かったカードをお店の人に渡す。あとはお店の人がやってくれるから‥。おっと、希望は勿論「響」。季節外れの暖かさなら、多少じっと立って並んでもそこまで苦にはならないだろう。  この計画、第一はイレギュラーなミッションを父がこなせるかが注目どころ。 ウイスキー手に入るかどうかは、こうなったら手に入ればラッキー程度。 父に相談を持ちかけてみたところ、父も知る銘柄‥、ときに一緒にウイスキー飲むこともあるから、「もし手に入ったら一緒に飲もうよ」と誘ったら快諾で乗ってくれた。  で、当日朝、私が通勤の時間に一緒に支度してヤル気満々‥今からだと一時間以上現地で立ちん坊、ありがたいけど、それじゃ90過ぎたじいさんにはあまりに酷だし可哀想。「あんまり無理しないで。できれば でいいんだから。もう少しゆっくりしてから出かけたら?」そう言い残して私はクリニックへと向かった。  16日は産業医研修もあり、クリニックも早めに朝あけて、診療やら内視鏡やら‥バタバタと。発熱診察希望の電話も。すっかり父のことは頭から抜けていた。 と、9時半過ぎにスマホがなった。父から。そっか、そっかぁ。ようやく、頼みごとの一件が頭によみがえった。出れば「手にはいったよ、響。1番に並んどった‥」「‥」 私が出た後、二度寝もせず、そのまま出かけたんだ‥ちゃんと地図通り行って並び、開店と同時に、私もどうなっているかわからない仕組みや誘導に従い手に入れてきたのだ。その一連の行動ができたことに、まだまだ、認知症っていっても、90過ぎには上出来! そして何よりその弾んだ声に、なんとか娘の願いを叶え役にたとうという父の気持ちが伝わってきて、ジーンとしてしまった。診療の合間だったから一瞬だけど。  そんなわけで今、うちには戦利品の「響」が鎮座している。クリスマスやお正月にちびちびやろうね! 空になってもボトル、捨てられないな。何となく。これが親バカならぬ、最近起きた、「子バカ事件」。

もうひとつ。今度は「後輩バカ」小咄。97歳に来年なる大学の先輩。出会いは突然のファックスから。2年前のちょうど今頃?クリニックにファックスが。達筆すぎるのと、うちのファックスの性能わるさが相まって、なんとも解読困難‥ところどころ、解読できるとこをつなぎ合わせると、「私は群馬県医専○年卒で昭和40年から市内で開業している‥」からはじまり、どうも自分が長らく担当している保育園の園医を群大でつないでいて、いまやっている後任託した先生が、最近体調崩してしまい継続できなくなり、かわりにさらに後輩の私にやってほしいと言う内容だった。突然のファックスにびっくり。開業5年しかならない私を、自分の後輩と認識していただけていたことが驚きと感動。さらには父より年上になるような大学の先輩が、しかも私が生まれる前から始めた自身の医院で、いまも診療を継続しているということにも感動。 おかげでクリニック休みの金曜日には時々、ちびちゃん相手の検診させていただき、大先輩とも時々お会いすることや、時にファックスで質問くればお答えしたりしている。(最近電子化の嵐でわからないことも多いらしい。私もついていくのに必死だが) その先生が、保育園の園長先生を経由して私に栗蒸し羊羹のお土産をくださった。 園長先生に聞いたところ、「高齢のため診療は控えます」みたいな張り紙はあるけど、玄関開けると、鍵かかってなくて開くから、昔からの患者さんは何人か通っているとのこと。 自分が95過ぎても、今だに昔ながらの患者さんがついてくる‥医者冥利につきる、自慢すべき我が先輩‥ 栗蒸し羊羹、お礼に電話してみる。「お元気ですか~」「最近は600メートルあるいても息が切れるんだ~」ちょっとくぐもった早口の声、そう言っても変わらずまだまだ元気そう。年に数回、上野に絵を見にいったりもするそうだ。先生も調子良さそうだったからこの際、お礼ついでに前から聞きたかったことお聞きしてみた。「羊羮、沼田の。ご出身ですよね?なぜ東京に?」「兄弟が皆、こっちにでできておったんだ~」「先生は私が生まれる前から開業なさっているんです。因みに先生が開業された年に三億円事件ありましたよね?地続きの府中市で起きた事件、当時としちゃびっくりなさったのでは?」「うん、自転車で見に行ったよ。行ったら燃えた後でまだ焼けた匂いが立ち込めていたのおぼえてるよ‥」そんなことまで聞きながらの雑談‥。話していて、この先生には、(私が生まれる前からなんて想像もつかないけど)開業の年月はあっというまだったのでは? そんな気がした。 大学の大先輩が、この府中の地で現役でやってらっしゃる。私はその後輩のはしくれ。ありがたい。「後輩バカ」。更にスゴいのは高齢の大先輩が「ところで、先生のお父さん元気?」うちの御父のことまで心配してくださり‥脱帽。

父も先輩大先生も、「誰かの役に立ってる」自負が多かれ少なかれ生き甲斐につながっているのかな?  今日は身近な素敵な高齢者自慢でした。

診察終わってだいぶ遅れて横浜の声楽の先生の所へ。すっごーい人と車…。私より数時間前に終わった父はもみくちゃにならなかったかしら? 今日は歌いおさめ。 今グノーのJe veux vivre に取り組んでいる。ロミオとジュリエットのジュリエットのワルツ。「私は生きたいの」 って。 難易度高いが、素敵なワルツ。気分も揚がる。 まだまだ、まだまだだけど、先生曰く走ってるから息が続くんだそうな… へえ、川べり気持ち良く走ることが、気持ち良く歌うことにもつながるのね… しかし体力いる大曲。軽やかに歌いこなす偉大な声楽家はやはりすごい!

先生のお家のクリスマス。今日はイヴね。

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