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裏ばなしの裏ばなし~そして決意~

[2018.03.29]

二年間を振り替えると前回までの話が全体の流れ。

裏ばなしを完結するにあたりどうしてももりこんでおかなければならないことが最後にひとつ。今年のはじめに起きた、私にとって、おそらく今年一番のサプライズ。
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年明けてまもなく、お清めをした日、私はご近所に挨拶に行った。これから家の解体から始まり騒々しくなることのお詫びとクリニックの宣伝も兼ねて。順に従い前のお家にもご挨拶。「まあ、お母様の希望叶えたのね!」
「えっ?そうなんですか?私はじめて知りました!母がそんなことを?」
私のあまりの動揺ぶりにその奥さま、言い出したことに責任を感じてしまったのか「きっとお母様、プレッシャー与えちゃうと思って言わなかったんじゃない?
でもたしか…まだ千穂ちゃんが学生のころ、群馬に戻るのを見送ってた時に玄関先でそんな話したの覚えているから…」記憶の糸をたぐりながら話してくださった。
「そんなのはじめて知ったよ~なんで言ってくれなかったの??私ちっとも知らなかったよ~」 
瞬間、母の思い出が次から次へと頭に浮かび、下唇をぎゅっと噛んでないと今にも…
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そう私は母親っ子。とても仲が良かった。いわゆる姉のよう母。性格も似てるから喧嘩するとちょっと大変!でもそんなことめったになく、従って国内外問わず2人で旅行することは数知れず。社会人になってからも時折ふらりと実家に帰っては、母のおいしい手料理をつまみにたわいない話で盛りあがり飲み明かし、朝刊を配るオートバイの音で「あれ、日にち変わっちゃったね…」なんてこともあったっけ。
私に「ここで開業したら?」そう切り出すチャンスはいくらでもあったはず。なのになんで話してくれなかったんだろう…
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 そんなことを考えながら、この日最後、うちから少し離れたとあるお宅へもご挨拶。今風に言えば、母のいわゆるママ友、私が小さい頃からの。私ををつれて電車を線路端で見ていたときに知り合い、それからのお付き合いだったみたい。今回お会いするのは母の葬儀以来。玄関開けたとたんの久しぶりの来訪者におばさんは驚き、事情を知ると泣き出した。「まあ、せつ子さんの夢がかなった!良かった!」ってしきりに。「えっ?ここでも話してたの?」もう、こうなると止まらない。さっきは我慢できたけどもうダメ、もらい泣きじゃなく、自然に頬までこぼれてしまう。「私はさっきはじめて知りました。そんなこと話していたんですね…」「あなたが大学に入ってすぐの頃かしら、卒業していつかは戻って地域で仕事してくれたら…って話しておられたのよ」
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「何で言ってくれなかったの?」その想いが頭をくるくる回る。「あらかじめ頭の片隅にあればもしかしたら、少しかわってた?」
ふと生前の母の言葉がよみがえる。「貴女の世界のことはわからないから…」だからいつも自分で決めて家族へは事後報告。医局に入る、専門決める、大学院…すべてそう。まあ、社会人になりゃそんなもんだ。そんなときもニコニコ聞いてばかり、母なりの期待や想いがあったことは少しも知らず想像すらしなかった。じゃ遺言は?…途絶えがちな意識のなかでも最期の頃はひたすら「楽しかった~」「力強く優雅に生きて!」ずっとそんな言葉を繰り返してばかりだったような…。
最近忘れかけていたけれど「優雅に力強く」母が遺したその言葉の意味を、死後しばらく考え続けこともあったっけ。
「娘に言いたいことも言えなかったなんて、ちっとも楽しくなんかないよ!」「こうなると早くにわかっていれば…見せてあげたかった~」最愛の母へ成し遂げなかったことへの切ない気持ちで胸がいっぱい。苦しい…。
以前小畑さんが作ってくれた地図上の診療圏の丸い円が父曰く「母の自転車行動範囲」だったことが思い出されると、それがたとえ偶然の一致にしろ、よけいにもう、たまらない…
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後から父に尋ねると、二人でそういう話をしたことは一回もなかったと。父も意外そうだ。「僕はあんたが大学に入った時、これで資格を取れば一人でも食べるに困らない」まずそう考えたそうだ。終身雇用で退職までしっかり勤めあげたならではのごく当たり前な考えだ。
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でも…
私が開業を決めなければ、今日聞くことができたこの話もずっと耳にすることなくそのままだったかもしれない。
それに…
最終的に自分で決めたことが母が希望していたことだと知ると、何だか間違った方向には進んでないかも…少し回り道したかもしれないけど…そんな気がしてくる。
もうこうなったらとことん頑張ってみよう。とことんやってうまくいかなきゃそれは仕方ない。やらない後悔よりやって後悔の方が私らしい!母の言葉を胸に、真冬の群青色の夜空を見上げてそう誓った。母も空からきっと見ていてくれる!
 優雅に力強く!やってみせるね!
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昨日治代さんから今日動きあるよって情報得て仕事帰りに慌てて現地へ。ホントだ!
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