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ウイルス感染と味覚障害

[2025.01.26]

1月も最終週となり、今日の日曜日外来も含めて発熱での問い合わせは極端に減少傾向。インフルエンザ感染が一段落したようで、コロナ陽性と出る患者さんのほうが目立つ印象。このふたつの感染既往者のみならず、通常の風邪と診断された患者さんも含めて、今年は「感染後咳嗽」を主訴に来院の患者さんが多いことが特徴的。 もちろん、はじめと別の感染症罹患、感染を契機とした喘息増悪の患者さんは別として、ただただ、咳のおさまりが悪いのだ。肺音正常、熱も、もちろん既に解熱。レントゲンでも目立った影もなければ対処療法しかない。 で、やっと数週間で改善傾向? と、そんな感じ。 今後はここに花粉症症状も加わると、たえず喉はイガイガ、何となく違和感…で、咳症状のおさまり悪い患者さんが増えてくるのではないかしら。

さて、たまにはいらっしゃる患者さんの症状から考察する、医療ネタもblog入れ込まないと。で、今日は表題ごときのテーマを。

発熱症状でいらした患者さんの中で、「インフルエンザ」、ちょっと珍しいとこでは「伝染性単核球症」と診断した方々。症状あり数回目の再診のとき「味覚障害」を訴えた人が数人いた。こういった患者さんは再診するくらいだから、なかなか解熱しなかったり、ちょっと原病の症状も重め。味覚障害というと、どうもコロナを連想するらしく、そのダブル感染を心配するのだが、そうではない。味覚は味蕾のある「舌」で感じる。風邪、つまり上気道炎は、鼻、喉、気管支や肺だけでなく、忘れちゃいけないのが「舌」もそういった一連のつながりのうちに存在しているわけだから当然炎症を起こす。溶連菌感染の「イチゴ舌」が有名だけど、そのほかウイルス感染でも炎症で舌の苔が白くなったり、分厚くなったりする。となれば舌に存在する味蕾も感度がにぶくなってくる。こういった機序でも味覚は感じなくなる。また、臭いも感じなければ味わうとならないわけで、風邪引いて、臭いがわかりにくくなることもあり、これはウイルスが直接神経組織を障害するというメカニズムと、ウイルスに対する免疫応答により炎症細胞浸潤が生じ、炎症細胞による組織障害因子で二次的に神経障害を生じるメカニズムが考えられていて、こうした風邪引いたあとの臭覚異常も合わさって「味がわからない!」となってくる。

コロナウイルスで「味覚障害」が有名になったけど、発生機序を考えれば、通常の風邪の原因ウイルスやばい菌でも、そこそこ感染症状が強ければ、味覚障害は生じうるわけ。ただ、コロナウイルスは他のウイルスとは違い、神経親和性があるといわれることから、ウイルスによる直接的な神経の障害の可能性も考えられてより味覚障害症状が強くあらわれるみたい。 通常の発熱後の味覚障害は、薄皮を剥ぐようにゆっくり回復していくことがほとんど。実際、クリニックで診察したコロナの患者さんは、半年がかりの人もいたけど、快方に向かった。

「味がしない=コロナにもダブル感染?」不安がる患者さんに、ちょっと私も頭を働かせてこういった説明をしてあげられれば、気の利いた診療だったろうに…。

 

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