これがほんとの種明かし
朝出るときに土砂降りだったから長靴、長傘で通勤。勤務先はピーカンに晴れて・・
最寄りの駅から病院までの10分の徒歩が拷問のようでした・・・長靴が蒸れて蒸れて。
昨日、今日、ほんとに天気は不安定ですね。でも陽ざしは何となく秋の気配。ちょっと影ある陽ざしに秋の気配を垣間見ます。
そうそう、先週の話の続きを。まったくわがクリニックの患者さんに無駄になる話でもないからね・・
あの後、緊急内視鏡でということで内視鏡室に行きました。
CTの画像と93歳という年齢しか聞いていなかったので、行ってみてはじめてご対面・・
外来からのオーダーだから寝たきりの方ではないと思っていたけど、むしろ認知症とは程遠いような(うちの誰かさんのほうがむしろ・・)
ちいちゃなかわいらしいおばあちゃん。「鎮静剤希望」なんて問診票にまるがしてあったけどそんなの無視。
介助者もそこそこそろったところで「じゃ、はじめましょ」内視鏡を入れてみると・・
確かに食道に何かある。固そう・・一見してではなんだかわからない・・
つかむにも大きいので万が一、食道と気管の分岐で気管のほうに落としてしまったら窒息しかねない・・
なら安全策でこのまま胃のほうへ押し込んだほうがとりあえず食道の閉塞は取れるよね?
へたに上にひいてくると異物で食道壁に裂創を作りかねない。(ちなみにこの手でこわいのが薬の包装を誤嚥したとき)
で、内視鏡の先でつつきながら押し込むも・・・アカラシアかなんかあるのかな?下部食道が狭くて下に落とし込むことはできそうもない・・
結局トライするもうまくいかず、引いてくるときに食道壁を傷つけなさそうなことを確認し、そのままバスケットにくるんで思いっきり吸引かけながらひいてきた・・
「どうか気管に落ちずに口まで引いてこられますように!」念じながら思いっきり「えい!」
患者さんの口から出てきた内視鏡の先には1,5㎝くらいはあろうか?大きな固い物体があった!
「とれた~」「で、何?」
「あれ?梅干しの種?」
よく見れば、梅干しの種というには大きすぎるような、むしろ夜店で見かけるすももキャンディーの種ほどの大きさのものだった。
「こんなの1週間もつまったままよく耐えたねえ・・」
「はあ・・楽になりました・・さっきとは違います」
すぐに入ってきた付き添いのお嫁さんは「突然食べると吐いてしまうから、なにがおきたかと思っていたけど・・命拾いしました」
なんて話している。「指が細くなって指輪がとれかかってこわいからそっちは外すようにしていたんですけど、まさか種とは・・」
本人も家族も、いつ食べたものかあやふやみたい・・・
「うちにもちかえって主人に見せなきゃ。記念に持って帰ります・・」なんてもはや笑いももれる。
さっきまでの緊迫はどこへやら・・
うーん、しっかりしているようでも、もう、この年になると、のどにつまらせそうな固いものは気をつけないと・・
このおばあちゃんは食道下部の動きの悪さをみると、なにかしら機能的なものがありそうだけど、にしても、お年寄りには
「噛むことは老化予防・・」とばかりも言えないなあ・・安全ばかりを考えてすべて刻み食というのも食欲なくすし・・
なんて思ってしまいました。
うちのクリニックにも、この手の小さなかわいいおばあちゃん「食欲はしっかりありますよ・・」なんてこの暑さの中、薬取りに来られる
若者以上に元気なお年寄り、何人か、すぐに顔が頭に浮かんでしまうのでした・・
まさにこれが緊急内視鏡の種明かし!