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新型タバコ~言葉のあや~

[2025.02.02]

雪予報も出ていた2月2日日曜日、節分。 明日が立春なんてなんか信じられない寒さと速さ…。今日の外来は発熱より、「消化器内科」としての仕事三昧。直接来院の「嘔吐が止まらない」からはじまり、予約の大腸検査まで。予報が外れて雪でなくて良かった。

昨日は午後休診にして、単位に必要な産業医講習会に出席してきた。産業医としての活動に必要な様々な知識が得られるわけで、その時招かれた講師が専門の話を聞かせてくださる。以前もそういった内容の中から勉強になったと思う事項をblogの記事にしたけど、昨日の内容で医者や、産業医だけの見聞に留めておくだけではならぬ事項があったので、早速今日ここに。「職場の喫煙、受動喫煙対策」が表題だけど、「新型タバコってどう?安全?」っていう患者さんからの質問に正しく答えるための内容。 「安全ではないよ」まではわかっていたけど、私自身とても勉強になったので。

まず、「世界基準からは日本は禁煙対策は遅れている」ということ。職場の受動喫煙等の取り組みを明記しないとハローワークにも求人できないなどのの対策もあるけど、そもそも国がタバコ産業を進めていることも立ち遅れの大きな要因なのは知られすぎる事実。そんな中、男女の喫煙率は世界89位ではあるけど、まだ、5人に一人は吸っているのが現況。2016年データーでは日本は(後述する)加熱式タバコが全国規模で許容されている唯一の国で、世界中で作られる加熱式タバコの96%は日本で売られているそうな。加熱式タバコで有名な「iQOS」は生産している米国では販売禁止なのになぜか日本では許容されてしまっている。 英国では2009年1月以降生まれにはタバコ販売を中止。また、複数の国々は従来のタバコのパッケージには健康を害することを明記せねばならぬ法律があったり(東南アジアのタバコのパッケージには肺ががんにおかされたグロテスクなイラストがどのパッケージにも施されていて、空港の免税店でびっくりしたっけ)、豪州では一箱4400円と高額にして禁煙に拍車をかける対策をうちだしている。新型タバコについても世界40各国以上が最悪逮捕に至るまでの規制を設けているとのことだ。 個人の自由を規制するのは良くないかもしれないけど、科学的データーが「百害あって一利なし」の健康被害を明らかになれば、当然の流れ。

まず、「有害成分の量と有害性は違う」というちょっとびっくりデーターから。紙巻タバコと前述新型タバコの一種、加熱式タバコでは「有害成分は90%低減」と宣伝されているけど、有害性分は10%でも十分危険。というのは…通常のタバコ。1977年当時販売のものから徐々にタール、ニコチンは低減され1999年販売の「○○ワン」は77年販売の10%含有となった。それからかれこれ25年経過。5万人の喫煙者で超低タールと従来型を喫煙している人での肺癌発生、死亡率差がなかったという2019年の米国データーがある。また、これも米国で3万人の少量長期喫煙者を追跡調査したところ死亡の相対リスクは1本未満で1.64、1~10本で1.87 と、1本未満でも吸わない人1から死亡率は増加している。 要は「90%低減」は言葉のあやなわけ。残る10%で十分危険なのだ。

「有害成分90%低減」と言葉のあやので従来おタバコから置き換えがち。この「新型タバコ」には「電子タバコ=液体のニコチンを気化させて吸う 加熱式タバコ=タバコ葉に火をつけるのではなく熱を加えてニコチンを含んだエアロゾルを吸う」がある。 新型タバコでも結局発癌物質のホルムアルデヒドやアセトアルデヒドは検出されているし、ニコチン量が減ったとは言え、前述データ示すように、あまり有意とは言えない低減。そればかりか、添加物で急性好酸球性肺炎というアレルギー性肺炎を起こす例、また、加熱コイルの金属ヒュームも吸入することになるからクロムやマンガン…塵肺の原因となっていたような物質まで吸入することにもなる。 この点からも「新型タバコは従来タバコより安全」とは全く言えない。

新型タバコは副流煙は出なくても、呼出煙は出る。これは成分分析しても十分な受動喫煙となるよう。さらには小児のタバコステイックの誤嚥や最近ではネット輸入で手に入るような電子タバコが違法薬物を混入でき、温床ともなっているということもあるようだ。  

私自身、嫌煙派なので興味もたずにいた電子タバコや、超低タールタバコ疫学的な話、参考までに今日の話題にしてみました。 日本はまだまだ対策遅れている。個人の自由かもしれないけど言葉のあやに惑わされないように。

 

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