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続く微熱

[2021.01.31]

1月の最後の日曜日。今年こそ希望の1年…といって年明けを祝ってたうちに緊急事態宣言。「こんな生活、かれこれ1年…いい加減、飽きちゃう」何人も同じように患者さんがぼやくなか、こともあろうにはしごで会食、深夜まで…一体どこの国のお偉いさんだろう。国民をなめてるのかい?地に落ちたもんだ。7日までの宣言が延長されるのは現状からは仕方ないとは思うけど、日々、現状を堪えながら、この先の国の政策を固唾をのんで見守る立場の人たちも沢山いるのに、民意と掛け離れた人々の言動に、呆れてものも言えない、お粗末な月末…月末といえば、来月から医療従事者からいよいよワクチン接種開始が始まるらしいけど、少しずつ、動きはあるようです。わがクリニックへも、私含めたスタッフで、何人希望者がいるかを申請するファックスが届きました。さらには一般向けの接種開始にあたり、各医療機関への調査もありました。「自施設に-70度でワクチン保管できる設備があり、そこに保管しながら注射が可能か?さもなくば、都度、人数分を保管施設から分けていただき、施行するか? はたまた接種可能施設として届でない?」 「1週間に接種可能な人数はどのくらいか?」また、「市の保健センターに当番として出動できるか否か?否ならその理由を記載のこと…」 これらの結果を取りまとめて市が接種可能な医療機関のクーポンを発行するのだろう…。こんな具合に府中市も粛々と準備中。きっと近隣市町村も同じだろうと思います。上記調査の関して私は、多少副作用の懸念もあるけど、自分が実際経験しないと、希望者にも経験を語れないから可能なら打つことにするつもりとした。で、クリニックも接種可能な施設として登録希望しました。接種後の副反応確認のための観察時間を考えると、密を避けてスペース確保は難しい…と二の足を踏む医療機関もあるかもしれないけど、そこは実家開業の強み。何なら庭のあきスペースに間引いて簡易椅子作って待機してもらえば何とかこなせそう。今の診察時間の後に時間作って通常外来と分けて…おっと発熱者を診る時間も取っておかないと…まあ、その頃は暖かくなるし、陽も伸びて明るい時間も増えるから、何とかなると考えてます。

先のビジョンは動きのあった一週間だったけれども、クリニックは先週も例年の1月より落ち着いていた。毎年のインフルエンザ騒動は何だったんだろう? 業者さんも「今年はインフルエンザの検査キットがさっぱり売れないなあ…」とつぶやいていたっけ…いつもの診察のあとの発熱患者さんや自費での検査希望者も時間調整しながらとりあえずまわせているかな?

自費での検査を希望される方は、やむを得ない理由で遠方に行く際の陰性証明のための検査か、「何となく体調悪いことが続いていて…とりあえずコロナの陰性だけは調べたいから…」という患者さんも。

今日はそういった本人希望PCR検査で来院した患者さんのなかで、「気をつけたい微熱」の話を。

「鼻がつまって微熱。多分コロナではなさそうだけど仕事柄、検査希望」とのことでいらした50台の女性。結果は陰性…。でも…聞いてみると鼻炎症状でこの半年2件の耳鼻科を繰返し受診。それぞれで抗生剤含めた治療を受けているようだけど…「で、すこしは良くなって来ているのですか?」「うーん、あんまり…」私は「コロナ陰性」の結果説明だけで、この患者さんとの縁を終わらせてはいけないような漠然とした感覚を持った。「繰り返す鼻炎は、内科疾患と関係あるかも…」と考えて、ひとまず副鼻腔のCTと採血検査を勧めた。「ちょっと通うのに遠いけど、いいかしら?」患者さんも多忙に関わらず、初対面に近い私のアドバイスを受けてくださった。

結果…案の定、副鼻腔のCTからは、口腔外科にお世話にならなければ鼻炎の根本治療にはならない情報を掴んだのだけど、問題は採血結果。ひどい貧血状態だった。「疲れやすかったり立ちくらみは?」「あったけど、微熱というと、うちのちかくの病院、みてくれるとこなかったから…」「そんなあ…」とにかく貧血の原因、突き止めなきゃ。女性で無理なダイエットでもしてないかぎり、鉄欠乏性なら、婦人科か、我ら消化器系だ。胃原因のこれだけの貧血なら、もっと前から強い自覚症状があるはず。「大腸?」さらに聞いてみると、半年くらい前、便に血がついたこともあったけど、微熱は診てもらいにくいし行きつらかったから…「それに、先生のクリニック、発熱やってなかったでしょう?」たしかに…半年前は開業2年にも満たないわがクリニックは発熱患者さんを普通に診療していても、知る人ぞ知るの小さなクリニック、ネットで調べてもわからなかったかも。今は保健所や発熱コールセンターからの紹介で来院される患者さんも、こうして遠方からいらっしゃるようになったけど。

乗りかかった船、この流れで原因まで突き進まねばとの勢いで、私は数日後の月曜日、自分のバイト先での大腸内視鏡検査を強く、半ば強引に勧めた。池袋までの遠路だが患者さんも良くついてきてくださったものだ…数日後の検査で大腸がんが判明した。微熱もこれが原因。「腫瘍熱」。大腸がんだけでなく、悪性腫瘍が原因で微熱が続くこともあります…。この患者さんは即日、外科紹介に至りました。

「微熱」をコロナと結び付けがちだけど、この患者さんもふくめて私が細々診療している発熱患者さんの中でも溶連菌からはじまり、肺ガン、リウマチ、肺化膿症…様々な疾患があった。コロナと診断されたら困る、怖い…という人もいらしゃるかもしれないけど、こういったケースもあると言うこともお知らせして、決して怖がらないでね。私も日々、できる範囲で診てゆくつもりです。コロナじゃなくてよかった…で終わらせてはいけないケースを見抜く臭覚も鍛えつつ。

 

 

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