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腸管マイクロバイオーム、フローラに影響するもの その①

[2023.11.19]

気がつけば「晩秋」。この時分になると日没のはやさに何となく物寂しさを感じるのは、毎年のこと。昨日は、午後、産業医講習会でクリニック臨時休診日。アナウンスしていても迷惑かけていたらすみません。コロナ渦で講習少なかったことめあり、今慌てて単位稼ぎに行かねばならず。どの先生も同じなのか、競争率高くて、抽選に外れること多々。今回は抽選当選。多少、診療時間削っても、出席で。とりあえずこれで更新分は稼げたから、やれやれ。また、この5年のうちに決められた単位稼がなきゃ更新できないから、来月も単位稼いどかないと。呑気にしてると5年経ち、間際に慌てて今回みたいになるから。来月も、週末は診療時間変更あるから、間際にお知らせいたしますね。

さて、それとは別に、平日夜は、様々な製薬メーカや団体が勉強会をしています。どの業界もそうだとは思うけど、コロナ渦以降、ウェブで聴講できるようになり、昔は考えられなかったような、遠方や地方でのセミナー、興味あればウェブで聴講できるようになったから、便利になりましたね。今日はそんな中でも、私自身、勉強になり、患者さんにも一考に値する内容なのでテーマにします。

「腸管マイクロバイオームに影響を及ぼすもの~薬剤種類や多剤併用について」  以前にも一度取り上げた内容だから(酸を抑える 有用性と弊害も考えながら)のblogも参考に。まず「マイクロバイオーム」とは。人間の身体のみならず、土壌、海洋など、様々な細菌が集団化して生息しているところがあり、この細菌集団を「マイクロバイオーム」と呼ぶ。人間の腸管には1000種類以上、脳の重量と同じくらい存在しているといわれている。昔はどんな細菌がいるのかも、細菌を培養し、顕微鏡て見る作業。ビフィズス菌みたいに酸素の存在下では生きていけないものもあり限界もあった。2000年代になり解析方法がすすみ、サンプル(糞便など)のから採取したDNAをPCRで増進させて配列から分類学的な解析で菌をしらべたり、一何種類も混在していても一度にそのDNAから、遺伝子カタログでのデータベースで解析できるようになった。要するたに、短時間で膨大な細菌を正確に解明できるようになったわけ。余談だけど2013年頃から、研究論文もうなぎ登りの投稿数、商業ベースでも賑わいをみせ、一説によると市場としては、2022年820億だったけど、2030年には3900億ほどの市場になるとの予想も。

さて、私が先日聴講したは日本の多施設が共同して4200人もの日本人の糞便でそれぞれのバイクロバイオームを調べ、データベース化して、薬剤、食事、生活習慣などで何が腸内細菌に影響を与えるか、さらには、ポリファーマシーが問題になっている昨今を鑑み、そのことにも言及した内容。4200例の便からは、前述のDNA遺伝子解析で1773種の腸内細菌が同定され、腸内細菌の遺伝子機能10689個、薬剤耐性遺伝子403個も同定された。  この研究によると、腸内細菌に影響を与える因子は「服薬内容」。次に「現病歴」。身体(年齢、性別、BMI).食習慣、生活習慣と続く。服薬内容が食事や生活、運動習慣より3倍以上も強かったという。次に薬剤でもどんな治療薬が影響しているのかを交絡因子として組んで解析したところ、消化器疾患治療薬、ある種の糖尿病治療薬、抗生剤、がトップ3。消化器系でも、PPIやP-CAB、いわゆる、強力な酸抑制をする薬剤、糖尿治療薬はαグルコシダーゼ阻害薬が最も影響していることがわかった。  酸分泌抑制剤について、この研究では、同一患者さんの服用前後の便を採取して、具体的にどのような腸内菌種の変化があるかをしらべているが、服薬後は日和見感染を起こす菌が増加することが明らかになった。また、薬剤を中止すれば元に戻せる可能性があることも明らかに。 次に、服薬数の増加にともなう腸内細菌の変化を調べたところ、薬剤投与数の増加にともない、多様な菌種の減少と関連していて、それらの菌は、身体にとって必要な短鎖脂肪酸を産生する菌種で、身体の免疫恒常性にも影響する菌種だった。また、服薬数の増加にともない多剤耐性遺伝子を持つ腸内細菌が増加していることもわかった。

まとめると、身体によかれと投与される薬剤が、実は腸内細菌のバランスを崩す一番の原因となっていたこと、また、服薬数がふえるほど、免疫に携わる良い細菌が減ったり、逆に抗生剤に耐性ができやすい身体となってしまうような腸内細菌が増えることがわかったわけ。市場では、腸内フローラに良いから…など多数の健康食が出回っているけど、それをはるかに凌ぐ勢いで実際は医者から投薬される薬の種類や数が腸内に影響していたわけ。可逆的な変化かもしれないけど、薬剤の投与については慎重に、見直す必要もあるということ。

個人的に、消化器内科医の私の感想 … 抗生剤よりも、消化器系薬剤が腸内マイクロバイオームに変化を及ぼす一番の原因と判明したことは、長い間の私の疑問の答えにもなった感じ。私が医学生か、さらにその前、高校生?とにかく、われら人体の胃袋には、塩酸にも匹敵するような強い酸が存在していることを知った時からずっと、理科の実験に使ったフラスコとその中に入った強酸がセットになって、そのまま身体の中にはめこまれているイメージがあった。理科の実験でも、取り扱い注意の強酸よ! 「何でこんな危険なものが退化もせずに身体にはめこまれているのかな?」って。腸内マイクロバイオーム、腸内フローラ…お花畑をイメージするような私たちの腸管内を守るための大事なバリア機構にもなっていたのね…  PPI、P-CAB…必要があって処方すれば良い薬も、ダラダラと不適切な保険病名つけてまでして、処方したり、加えて言うなら、お守りがわりで…ってせがまれて処方したりすることはしたくないな。自分の思い通りにならないと暴言吐いて、投稿サイトに書き連ねる輩もいるけど、私は銀行のATMじゃないから。薬剤処方マシンじゃございません!

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