副作用予防で服用の酸抑制剤
窓の外の日差しに強さと温もりを感じる今日、日曜日。あっと言う間に2月も終わり。来月の今頃は桜の話題も…そんな春予想も当たり前にできる私たち、なんて恵まれているのだろう…。なんだか後ろめたささえ感じてしまう、例年の春待ち月とは違う…。「戦争」。かつてもそうだったけど、こんなに広くてたくさんの人類のひしめきあう世界が、たった一人の愚かな考えで一変してしまった。 意図的にか、単にカリキュラムの時間不足のせいか、高等教育までの歴史で、私は昭和の歴史をきちんと学ぶ機会がなく、親世代と違い、自らの戦下体験もない。大人になり、しかも割と最近の昭和の映像で、かつて(今も?)愚かだった日本の近代史を知るようになった。それと間髪入れずに映し出されるウクライナの映像は、進化や成長の見られない残虐な人間の営みの再現のよう。終わりも見えない…。 ロソアのウクライナ進攻から1年… 今週はふとした折りに、考える一週間だった。
2週に渡り酸抑制剤特にPPI絡みの話、先週は長期処方になりがちな疾患を取り上げました。もうひとつ、当たり前にPPIが投与されるけど注意しておかなければならないことがあります。循環器や脳血管系で血栓予防のために処方されたり、整形外科領域で処方の鎮痛剤…これらとセットに処方される制酸剤の関わりについて。
NSAIDと呼ばれる「鎮痛剤」は痛みや発熱を引き起こす物質=PGE2が作り出されぬようにブロックすることが作用機序。ところがこのPGE2は、消化管粘膜に対しては、粘膜血流増加や粘液の増加等の粘膜保護作用があるので消化管にとっては保護作用が薄れるというマイナス要素が働く。加えて、消炎鎮痛剤剤のひとつ、「アスピリン」には、消炎鎮痛だけでなく、そのエステル基が血小板の凝集を抑制するという働きがあることが1967年に解明された。いまでは「血の固まりを防ぐ」、巷のでは「さらさら系の薬」と称して循環器や脳血管障害既往の患者さんで服用しているケースも多い。痛みを取ったり、血栓予防で長期服用が必要な薬だけど、作用機序からも確実に消化管障害を引き起こすわけ。障害の加わった粘膜が胃酸の強酸の影響で潰瘍、出血のリスクとなるわけだから、制酸剤としてのPPIは必要となってくる。特に脳や心臓の血管疾患を罹患した人が消化管出血を起こすと生命予後自体が悪化するというデータもでていたり、出血を起こした患者さんが再出血を恐れて低容量アスピリンを服薬をやめても再出血は服薬を継続した人と変わらず、むしろサラサラをやめたことでの血栓形成に繋がってしまうこともデーターとしてあがっている。 こういう状況で鎮痛剤や低容量アスピリンが必要不可欠な方には「制酸剤」は大事! となるわけだけど、ここでひとつ「へえぇ」というはなしを。 それはこれらの薬と小腸粘膜障害の関係について。最近の小腸への検査手段の発展により、小腸粘膜の観察がより詳細に可能になった。カプセル内視鏡や小腸鏡。消炎剤服用の方の多くに炎症所見が服薬していない人と比べて有意に認められていると言う。PGE2不足による消化管障害は全消化管に起こりうるわけだから、あたりまえの結果ではあるけれど。小腸では障害を受けた粘膜が胃酸ではなく、グラム陰性の細菌の仕業でより悪化するという。でさらにこの話にはその先があり、「胃」での粘膜障害予防の「制酸剤」が、腸では細菌そうのバランスをくずしてしまい(前々回のblogにもでてきたよ)、結果、小腸障害が起きやすくなってしまうという。動物実験の結果や小規模でのデーターなので、時間経過も含めて長期にデーター解析しなければならないけど。また、そういった結果に対して、プロバイオテックスの開発や検討も行われている。 こういったことも踏まえたうえでも今は疾患によっては「鎮痛剤」や「低容量アスピリン」が生命維持に不可欠ならば、服薬の必要性があるわけ。 あと、つけたしですが、「さらさら系」、やはり血液が固まるのを防ぐために服用されることのある「抗凝固薬」や「DOAC」。これらには直接的な粘膜障害作用はありません。ただ、たまたま傷ついた粘膜や血管損傷でもともと血液が固まりにくくなっているからより損傷が大きくでてしまう。時に予防的に「制酸剤」も処方されちゃってることもみられるけど、こういった薬の作用機序を考えると、同じ「さらさら系」とわかりやすく語られる中でも「抗凝固薬」へのPPIの有効性は確立していません。
今や高齢入院患者さんの半数近くが服薬してたり、外来でも良く処方したり求められる「制酸剤」。 知っておいた方がよい情報、2月は私見も含めまとめてみました。