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お腹の張りとSIBO

[2021.12.26]
あっという間に今年も残すとこあと5日。日だまりは暖かでも吹く風冷たく年の瀬を実感。どういうわけか年末って「どうしてこの時期に?」って、何かしらの大病の患者さんの対応で、基幹病院の勤務医のときは、近隣医療機関から依頼を受けることが多かった。今はその逆。「高度医療機関で診てもらわなければ」とこちらがお願いする立場。近くて遠いという噂の近隣、某医療センターは奇跡でも起きない限り受けてくれない。案の定「年明けまで無理」ですって。おまけに電話受付が、名乗れば「痴呆クリニックの痴呆先生ですね」なんて、呆れてものも言えない対応。待合には他にも患者さんが待っていての非常事態なのに。でも、何とかしなきゃのこちらの依頼が伝わる医療機関もちゃんと健在。いつでも受け入れてくれる連携病院には本当にいつも感謝。 そんなこんなの年末の週末。 昨年末の「第三波コロナ」の多忙さは今のところは感じない、むしろ例年通りのクリニック年の瀬でした。 今日で今年のblogも最後。1年を振り返り、コロナ以外で印象に残るのはやはり「お腹の張り」。私が消化器が専門の女性医師、何度か「ガス」のことをblogで取り上げたりしたせいかもしれない。過敏性腸症候群については臨床研究のはなしとともに書いているので、今回は、最近注目されている「小腸のガス」のこと。「SIBO」「small intestinal bacterial overgrowth=小腸内細菌増殖症 」。  ご存知の通り腸内の細菌はほとんどが大腸に存在しています。その数は100兆個ともいわれ、善玉と悪玉の細菌バランス云々、腹部膨満の原因として今までイロイロお話もしてきました。 そんな中で今日は「おなかのはりと小腸」のはなし。混乱するからちょっと寝かせてたけど、年度末のblogはこれで閉めることにします。そもそも小腸についての研究自体があまり進んでいなかったこともあるけれど、小腸は微絨毛という粘膜に覆われ、絨毛構造で表面積を少しでも多くして、食事からの栄養を吸収するようにできている。吸収がメインの働きなので、便を作る大腸と比べ、小腸内の細菌は大腸の細菌より比較にならないほど少ない。多種類の細菌に晒されることに慣れていない小腸内に、様々な原因でたくさんの細菌が増殖することがあり、炎症を起こしたりガスが発生したりする。原因は様々で、加齢に伴う小腸と大腸のつなぎ目の「バウヒン弁」の機能が弱り大腸側から細菌が逆流しやすくなってしまう、また別の原因として、(逆流性食道炎で手軽に処方されがちな)PPI=胃酸分泌抑制薬の影響で、本来胃で退治されるべき細菌が小腸まで流れ込んでしまう、抗生剤の乱用による腸の細菌への影響、胆嚢摘出など手術での胆汁の減少(胆汁の成分の胆汁酸は腸の動きを活発にします)、キャンピロバクターなどによる急性胃炎など腸管感染を起こしたことが発症要因になったり。それこそ加齢や糖尿病や甲状腺機能低下など、他疾患の影響で腸の動き自体が弱って来ることも発症要因となっています。そして、「過敏性腸症候群」と言われている方の7~8割にこの疾患を合併しているとも言われています。「お腹がはって痛い」「ガスが多い」など症状がオーバーラップしているから気がつかれにくいことも。また、小腸が張ってくると、細胞間のつなぎ目が緩くなり(リーキーガット症候群)血管内の様々な炎症物質が侵入しやすくなり、脂肪肝、NASH、さらには心筋梗塞も発症しやすくなるようです。当然、小腸内でメタンガス、水素ガスが発生してガスやおならの原因にもなります。 「じゃあ治療は?」というと、「小腸でガスを発生させない環境にする食事療法」。大腸と違って小腸は食べたものの吸収にかかわる場所だから、細菌のバランスを整えることがメインの大腸と違い食事療法がポイントとなります。ここで登場が「低FODMAP食」。昨今「腸活」なんて言葉が流行っていて、聞いたことある方もいらっしゃると思います。FODMAPは、fermentable(発酵性の)、oligosaccharides(オリゴ糖)、disaccharides(2糖類)、monosaccharides(単糖類)、and polyols(ポリオール)の略で、この頭文字を取って“FODMAP”。 オリゴ糖(レンズ豆や玉ねぎに含まれる)や、発酵食品(お馴染みヨーグルト味噌など)は、普段、「体に良いもの」と思われがちだけど、体質によってはあわないどころか、かえって体調を悪化させてしまうこともあるわけです。FODMAPに含まれる食材は小腸での吸収が悪いため小腸に水分が引き込まれて、腸管が水浸し状態となり、お腹の動きが悪くなり、張ったり痛くなったりするわけです。「パスタやパンで調子悪い」「チーズが苦手…」 ただただ子供のころからの好き嫌いが大人になっても続いてる…と思い込んでいて、実は普段、お腹がガスリやすい人はちょっと、注目してみても良いかも知れませんね。 あと、コロナ渦でのおなかの張り…今までストレスでの過換気やマスクでの口呼吸、イロイロ私見も含めてblogに書いてきました。私見ついでに…コロナでお家時間が増えたり、リモートワークで通勤がなくなったりで自分の生活を見直す機会も増えて…よかれと思ってはじめた食生活が、実はFODMAP多いものが含まれていて、結果お腹最近はりやすかったり痛くなったり…何て言う方もおられるかもしれませんね。  「今年の診療…」で、頭に浮かんだのが、この「おなかのはりとガス」のことでしたが、こういった「QOLを妨げる」 と思われる疾患が、当事者にとっては、「今、ここに存在するのもつらい…」と考えてしまうくらいにつらいものであるんだ… ということを私自身も、ある患者さんから考えさせられました。わざわざ予約をしてきてくださり、こちらも時間通りに…と思ってても待たせてしまう患者さん…「何のための予約なんだよ」って思われていることは重々承知。どうも済みませんでした。ただ、10分刻みなんだから待たせないで…と焦るがあまり、「今のこの症状、何とかして」って必死な想いでいらっしゃる患者さんの言葉、受け流さないようにしなければ… まだ31日までありますが、この1年、どうもありがとうございました。 コロナも次から次へと変異を繰り返し、まだまだ落ち着かない日々は続くでしょう。大きくビビらず、いつもの努力をもう少し励行しつつ、今日の元気をありがたく生きていきたいですね。 今年のblogはこの辺で… 次回は再来週に。
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