メニュー

もう一つのジレンマ~高齢者への医療介入~

[2022.12.11]

昨日土曜日は、診療を終えて午後から久しぶりに丸の内に出掛けた。年一回の、取引先検査会社の主催する感染症フォーラム。演目「したたかなコロナに対する感染症対策」 何か新たな見識が得られることを期待しつつ出向いた。聴講したなか、メディアでもお馴染みの、阪大忽那先生の「ウィルス性肺炎の臨床像」。デルタ株の頃のCT像を見せながら「こう言ったコロナで重症化したCT像はオミクロンになってから、あまり見なくなりました。いまはコロナ感染がトリガーとなり持病が悪化しての重症化がほとんどで…」と阪大に搬送されて来るコロナ重症患者さんの臨床像も様変わりの様子。第七波以降、軽症80%、中症15%、重症5%で致死率は0.12%とのこと。コロナ全体での致死率が1.05%と言われているから、第七波以降は様子が変わってきている。これは、ワクチンの効果もあって重症化が防がれているのだろうという分析であった。さらにはSARSの致死率が9.4%、MARS の致死率は34.4%だったそうだから、最近のウィルス感染症の中での致死率は、実は新型コロナは低い。しかし感染者数が桁違いに前者と違うから…  つまり、感染しやすい感染症なわけですよね。   終了後、とっぷり日が暮れ、外は華やかなイルミネーションがまばゆく街を飾っている。この季節にしては暖かな夜のせいか、人出も半端ない…。「早く帰宅しなきゃ。高齢の父も一人で待ってるし…やらなきゃいけない父の健康管理や雑用もある…」 そうはわかっていても、クリニックと家の往復の毎日。帰宅も深夜。この時間からフリーも貴重な瞬間。何だかすぐに帰宅するのが嫌になって、ふらふらイルミネーションまばゆい丸の内界隈から、皇居かすめて青山通りにでて、途中表参道のイルミネーション…ゴールは渋谷。クリスマスイルミネーション梯子しながら延々、闇にまぎれて散歩…というか、いつもと違う環境にい続けたくて、ひたすら歩いて憂さ晴らし。イルミネーションスポットは人、人だったけど、あとは静かな都会の夜道。すれ違うひともほとんどない。物騒な気配もなし。 振り返れば満月は過ぎたけどまだ丸い月…。 適度に涼しいかぜにふかれて、すっきり。  にしても、先般のワールドカップの盛り上がりや今日の人出…やはりコロナまだまだ増えそう… そんな予感は持ち帰りつつ帰宅。

案の定、けさ、日曜は開院と同時に久しぶりに発熱外来問い合わせ電話が鳴り止まず。想定内ではあったけど。うちは65歳以上、基礎疾患あり、妊婦以外の重症化リスク高い人を優先して診察しているから、それ以外は都の自己診断、自己登録制度を利用してもらっているが、これも知らない人にはいちいち説明するから、やはり事務作業の煩雑さは変わらない。自分で調べて疑陰性でも陰性なら外に出ちゃうし、陽性でもそのまま放置の人もいるだろうし、クリニツクへの直接来院や届け出業務は減ったが、野放し状態の人が出歩けば感染者は増えて…やはりいまのしくみのジレンマは先週からもやもや持ち続けている。

ジレンマといえば、最近私が診療で感じるもう一つの答のないジレンマ。 それは高齢者への医療介入。 うちは住宅街の診療所。高齢者も多く利用してくださる。検診での異常、基幹病院から地元医療機関への継続治療で、等々。血圧、脂質に高血圧… 80歳…特に85歳過ぎまで医療機関にかかろうとしなかった患者さんの異常値は半端ない。LDLは200越え、血圧も上が180、へたすると200を超えている。それでも自覚症状ないし、今まで放置状態だったようだ。或は基幹病院からの患者さんも、中にはさじを投げられ「心不全予防のためにも厳格に血圧管理をお願いします」 なんて、情報提供書にかかれていても本人ケロッと。 脂質は食事の注意でダメなら投薬となるが、血圧は家庭血圧測定していただき、朝の血圧が高い人には「朝高い人の四人に一人は夜間も高いってデータがでているの。夜も高い血圧だと、本人寝ている間もずっと心臓に負担がかかって心臓休むひまなく負担かかりっ放し。つかれはてれば、心不全や不整脈も起きちゃうから…」 私なりに適切な血圧降下の必要性を説明する。 問題はこの先のジレンマ。 「わかった!今のままじゃまずいんだね、もう少し長生きしたいからさ!」 こんなおじいちゃん、おばあちゃんはある程度、教科書やガイドライン通りの治療ができる。 が、中には「一人暮らしだし、淋しいんだ。もういいよ」或は別の患者さんは「年齢に過不足ないから…」って。 85過ぎると環境により、自分の健康に対するモチベーションも変わってくる。それも、弱ってるってわけではなく、杖なく歩いて、応答も多少耳は遠くても、しっかりしている…一見すれば、普通に治療介入したくなるような矍鑠とした高齢者さんたち。治療となると、考え方は様々。 どこまで地域の医療機関として働きかければよいのか…「淋しい」「もういいんだ」そういいながらも来院してくれる高齢者、「教科書どおりが理想」 とはいかないジレンマを最近かんじている。

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME