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夏場に多い食中毒その① キャンピロバクター

[2021.07.04]

線状降水帯なんて気象用語、昔はなかった。今では梅雨の末期を知らせる当たり前の気象用語に君臨しているけど。さっき診療終わって(今日は土曜日)テレビつけたら目に飛び込んだのは土石流…午前中に熱海で起きた土砂崩れの映像だった。よく見れば、何度か行ったことのある熱海の温泉地。確かに急勾配で伊豆山神社まですごい坂道だったと記憶している。それよりさらに上から土石流が下の国道まで一気に流れて来ているとのことだから、巻き込まれたらひとたまりもない。「何十年もここにいるけど、初めての経験」「いつもは殆ど流れてないような細い河川だったけど…」 もはや経験則だけでは予測できない自然の猛威、ごく普通の暮らしが一瞬で流されて変わり果て… 恐怖とともに心が痛む週末。

こんな梅雨真っ只中のクリニック、たまたまかもしれないけれど、キャンピロバクターが原因と考える食中毒の患者さんが多いので、そのはなしを。長くblogやってて、そういえば食中毒の話題、なかったような…ちょうど良い季節だし、開業前に今の時期、某保険会社の会員様用に書いたコラムを引っ張り出してきて手直しして2;3回に分けて「夏場の食中毒」について特集しますね。 というのもコロナ渦、昨年は出かけられなかったから…とキャンプ場の予約をしてる…自宅の庭でホームパーティー…なんて話しも聞く中で、たまたま最近多く出くわしたのが、このキャンピロバクター。今一度、これからの季節に備えて細菌性食中毒の基礎知識を。 

キャンピロバクターは統計的にも1番多い食中毒。「細菌=ばい菌が原因の食中毒」には「感染型」と「毒素型」がある。「感染型」は細菌に感染した食物をヒトが摂る(細菌を食べる)ことでおきる食中毒。「毒素型」は食品内で細菌が産生した毒素を摂る(毒素を食べる)ことでおきる。キャンピロバクターは感染型ね。人間か動物の腸管にしか生息できない菌。症状は人間にしか出ないという特徴もある。だからペットと口移しとかしての感染もある。でもヒトへは鶏肉を食べて感染することが最も多い。で、ここ最近のちほクリニックの患者さんは、外食でユッケ食べたとか、焼肉で「まっいいか…」で食べちゃったパターン。人に提供するわけでなく、ワイワイ楽しみながら自分で焼いて口に運ぶとつい、話に夢中になり、口に運ぶ際「まっ、いいか」って状況、目に浮かぶくらい、有りがちパターン。潜伏期は数日が一般的。10日以上の潜伏もあるから本人も忘れてることもあるから結構問診てこずることも。 で、症状は下腹痛(かなり強いことも)下痢、発熱。腸のただれ具合によっては血便となることも。好発症部位が盲腸に近い右側腸だから本人は虫垂炎と思って来院され、医師の問診でわかるパターンもあり。また、下痢よりも、昨今は(今回もそうでしたが)発熱症状でコロナを先に疑ってびっくりして受診のパターン。「発熱センター」や「保健所」から紹介された患者さんもいらした。そもそも外食のために人込みに出かけてる人もいるわけで、自ら行動に心当たりがあるのかな…?

十分な加熱で菌は死滅するから予防はその一点につきますが、問題なのは少量の菌でも人体に影響を及ぼすと言うこと。一説には菌をもつ鶏のひとしずくの汁でも感染力はあるとか。だから肉を調理したまな板でそのままサラダ用の野菜を切ったりして、提供された野菜を食べてキャンピロやられるという事もあるから、こうなると問診とるのも難しいし、本人も食べ物にやられたとは思ってないのも当然。「お腹の風邪」、「ウイルス性腸炎」 と診断された方にも実はキャンピロバクター腸炎だという事もあるのかもしれません。診断は便培養になりますが、全員に便培養検査を実施しているわけではないからね…。 普通は対症療法だから処方は同じなんですが、いずれにしても下痢止めは出しません。症状が遷延するから。自然治癒のケースも多くありますしね。ただ、賛否わかれますが先生によっては、患者さんによっては抗生剤投与に踏み切る先生も。侮れないのは、まれに腸炎がおさまって2,3週間してから突然、身体が弛緩性の麻痺=ギランバレー症候群 をおこすことがあるのです。顔面神経麻痺や身体に力が入らなくなるギランバレー症候群。この疾患はキャンピロだけで起こるわけではないけれど、キャンピロバクターが原因として多い。 身近な食中毒だけど侮れない食中毒なんです。

予防は加熱! 特に鶏肉ね。現在の衛生管理方法では鶏肉からキャンピロバクターを100%除去は困難との事なので基本的には生食はさけたほうが良いでしょう。また低温では死滅しないので冷蔵庫で肉の保管と他の食物が直接触れないよう、あと、前述のように調理の際の肉処理のあとのまな板、包丁に注意。 家族で感染者が出ても慌てず、手荒いや同じタオルは使わないとか、基本的な注意を。仕事にへの復帰は、インフルのような縛りはないので、ご本人の症状の軽減具合と会社の就労基準で決めて良いと患者さんにはお話してます。

今日はこにへんで。

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